「俺たちはどうやら『日本のジャズ』といえるものを創り上げた様に思う。 それを世界にアプローチしたいんだ」。1974年、こう言い残し日本を去った沖至。 本作は、その渡仏直前に行われたコンサートの実況録音である。 それまでの成果とこれからの覚悟が滲むサウンドは、いま聴いてなお鮮烈。沖のピークのひとつを捉えた作品である。

1974年に渡仏した沖至が、一時帰国した1977年録音した本作。 活動初期から共演してきた翠川敬基と富樫雅彦、そこにパリで親交を持った加古隆が加わった編成である。 成熟した音楽性は、この再会と出会いを機に、いよいよ佳境へと入る。 沖の代表作のひとつであり、同時に1970年代半ばの日本のフリー・ジャズの成熟を伝える名作である。

1970年代初頭、パリで現代音楽の作曲を学んでいた加古隆はフリー・ジャズに出会い傾倒、間もなく同地でピアニストとして活動を始める。 ボブ・リード、ノア・ハワード、高木元輝、豊住芳三郎らと共演を重ね、その名は瞬く間に世界へと広がった。盟友とともにパリで録音した本作。 理知と熱情が生む他に類を見ないサウンドが、パリでの日々を描き出す。

宮間利之率いるニュー・ハードの一員として活躍したトロンボーン奏者、片岡輝彦が残した唯一のリーダー・アルバム。 “大きく、たくましく、荒々しい”と評されるプレイで、ジョージ大塚や辛島文雄らをバックに圧倒的な存在感を放つ。 躍動する4ビート、艶やかなバラード、陰影の深いモード・ジャズと、重厚なサウンドを多彩に繰る快作だ。

エルヴィン・ジョーンズやジョージ大塚に寵愛された名ピアニスト、辛島文雄。ファースト・アルバムとなる本作は、鈴木勲、ジミー・ホップスとのトリオ編成。 Whynotレーベル初の日本人作品となったこともあり、強い存在感を放つ作品である。 躍動感溢れる「Piranha」やメランコリックでストーミーな「Little Island」など、名曲・名演が並ぶ。

エルヴィン・ジョーンズやジョージ大塚に寵愛された名ピアニスト、辛島文雄。 サード・アルバムとなる本作では、ジョージ・ムラーツと日野元彦を迎えたトリオで、より鮮やかで躍動感のあるプレイを披露。 心地良く炸裂する「Landscape」、爽やかな「Revlis」、美しいバラード「The Fall」など、色彩豊かだ。 全曲、辛島のオリジナルなのも嬉しい。

奏者としてはもちろん、作・編曲家として歌謡、映画、テレビなど数多くの作品を手掛けてきた渋谷毅。 ジャズ・ピアニストとしてのファースト・アルバムとなる本作は、鹿児島のライヴハウス＜パノニカ＞で録音され、有志の働きかけにより作品化された奇跡的な一枚。 トリオ編成による衒いのない瑞々しい演奏。渋谷の魅力が濃密に香り立つ。

世界の前衛ジャズ・シーンを渡り歩いたドラマー／パーカッショニスト、“サブ”こと豊住芳三郎。 セカンド・アルバムとなる本作は、“七つの海”と題されたコンサートの実況録音。 都合7人のミュージシャンが参加したが、ここでは盟友・高木元輝を含むトリオによる演奏を収録。 緊迫、炸裂、反駁、融和。息つく暇のない圧巻のパフォーマンスである。

本作は1974年、郡山ジャズ・コーナー・ママにおける豊住芳三郎のライヴ録音盤。シカゴ前衛派の拠点AACMで極意を会得、パリでの加古隆との共演を経て帰国した豊住芳三郎による、シカゴへの答礼メッセージ。 (C)RS

日本の前衛ジャズ・シーンを牽引したサックス奏者のひとり、松風鉱一の1981年録音作品。 メジャー・レーベルから事実上のデビュー盤となった衝撃作品。 松風のオリジナルで構成されており、一貫してアドリブの追求に自己を完全燃焼させ、ずば抜けたパワーで生き抜いている。 切れ味鋭く疾走するディープ・ジャズに心湧き立ち、鋭角なブロウが奏でるバラードの美しさに息を飲む。